2016年4月18日月曜日

ポータブル機器とリケーブルとの出会い(その1)

今回は、私が個人的に経験してきたポータブル機器について
幾つかお話ししようかと思っています。

私が初めて音楽を携帯できるようになったのは中学生になった頃
誕生日祝いで買って貰ったカセットテープのSONYのWalkmanが最初でした。
※確かWM-509か609だったかと思います。

最初に聴いたソースはテープで販売されていたMichael Jacksonで
本体と併せて、購入した物でした(現在でも現物が残っています)。
あの時に聴いた、人生初のステレオを付属イヤホンで聴いたときの衝撃は
未だに忘れることが出来ません。

当時はレンタルCDが流行りだした頃で
夢中になりながら流行曲をラジカセやコンポを用いて
カセットへのダビングを一生懸命したことを覚えています。

その際にふと疑問に感じた事が2つありました。
リモコン付きの付属イヤホンとリモコンの付いていない
同じモデルのイヤホンを聴き比べると、リモコン無しの方がクリアに聞こえたのです。
この頃はまだその理由について、深く考えることはありませんでした。

もう一つの疑問は、CDを聴いた際のS/Nや音質とカセットの音質が違うのは
当然の事でしたが、それよりも再生速度がカセットだと速く感じられたのには
流石に大きな違和感を覚えました。

これはラジカセやCDコンポ等でダビングしたテープでは
ほぼ全てで感じられ、カセットではこう言う物なのかと半ば諦めていました。

ところが私の親戚の家に、据え置き型カセットデッキ(確かTC-K333ESX)があり
遊びに行った際、折角なのでCDをダビングさせて貰うことにしました。
(CDデッキも据え置き型で確かCDP-333ESDからの接続)
勿論、録音したカセットを確認の為にそのデッキで再生するのですが
すると、CDとテンポが殆ど変わらなかったのです。

この出来事が、機器によって出来上がるカセットの音質やテンポが
全く違う物として出来上がってくるのだと、認識するきっかけとなりました。

その後、手持ちのWalkmanの故障を機にWM-701Cに乗り換えましたが
再生テンポの問題は相変わらずでした。

そして高校生の時に初のアルバイトで、自分で購入したのが
WM-DD9と言う機種でした。

このモデルは知る人ぞ知るのですが、リモコンは無いわ
モーターが補助も含め4つも入っており電池消費は激しいわ、
しかも重いわで実用性が極めて悪い(笑)モデルでした。

しかしこのモデルから出る音を聴いた際の感動は、今でも覚えています。
再生音の良さは勿論でしたが、それ以上に再生テンポが
CDと殆ど違和感なく聴くことが出来たからです。

そしてリモコン無しモデルの方が、とても不便ではありましたが
音が鮮烈に感じたことを覚えています。

ここから私のイヤホンとリケーブルの歴史は始まったのかも知れません。

次回につづきます。

2016年4月15日金曜日

電源筐体とDCケーブルとの関係(その3)

前回まではDCケーブルの配線についてお話ししてきました。
今回は実際のDCケーブルと機器の設置方法について、お話ししようかと思います。

電源部と本体が分かれている機器は、その設置方法によっても音に影響が出ます。
例えば別筐体モデルを設置するには幾つ可能方法があります。


1.電源部と本体を重ねる、いわゆるスタック置きする方法

2.ラックの段を分けて、上下段に分けて配置

3.複数棚板がある場合は横置きに並べて配置

4.ラックの最下段か近くの床へ設置

5.互いの機材を後ろ合わせにして床に設置


1番のスタック置きは、製品写真で良く見掛ける方法で
DCケーブル類もかなり短く接続出来ますので、一見良さそうに見えますが
音質を考慮するならば、実際の使用で最も避けたい設置方法だと思います。

2番は多くの方が採用しているのでは無いかと思います。
比較的ケーブルも短くて済み、機材の下に何らかのボード類を挟む事で
震動面だけでなく、ノイズ面の影響からも
効果が期待出来るからです。

3番も震動の面からはラックを物理的に分ける事が出来ますので
環境が許すのであれば、お薦めの方法の一つです。
しかしながら縦に分けるよりもケーブル長が長く必要になる事が多く
場合によっては接続出来ない可能性が出てきます。

4番も良さそうに見栄ますが、案外床面は機材の水平を取りづらい事と
仮に鉄筋住宅の場合、床材の鉄骨と極めて接近する事になりますので
磁界の影響を受ける可能性が高くなります。
特にアンプの電源部は、磁界を発するトランスを使用しますので
特に注意が必要です。

5番は最もケーブル長を短く配置する事が出来ますが
設置スペースにかなり余裕のある方でしか出来ない方法です。
また、本体も含めて床面からの影響を磁界・震動面と、更に強く受ける事になります。

総じてお薦めは、ケーブル接続に無理の無い距離を置き
重ね置きは避け、可能であれば上下左右の別棚に配置し
床置きをするのであれば直置きではなく何らかの配慮をした方が
(例えば低い高さのラックに敢えて配置する)のが、良いのではと思います。



この様に、別筐体になる事でのメリットもある反面
設置と配置が倍、難しくなるデメリットもあります。

この点はポータブル・据え置き型に拘わらず影響を及ぼしますので
是非、現在お持ちの機材配置を見直すと、大きく音質改善に繋がる可能性があります。
お掃除も兼ねて、一度配置を見直してみるのもよろしいかと思います。

2016年4月13日水曜日

電源筐体とDCケーブルとの関係(その2)

オーディオ機器のDCケーブルはハイエンド機器に成る程
ピン数が多かったり、端子に特殊なタイプを用いたりする場合が多く
なかなか交換が難しい、と言う話をしました。

ポータブル機器では消費電力の関係からか
そこまで内部本数が多くないケーブルが多いようです。
また、電源段にスペースやコストの問題から
スイッチング電源が採用されている場合を見掛けます。

スイッチング電源は周囲に影響するノイズが多いので
オーディオ機器用途では、音質に不利になるケースが多いです。

そこでより音質を追求する為、低ノイズを謳ったアナログリニア電源を
搭載した更なる性能向上を目指した物も登場しています。

せっかく生成した良質な電源ですので、
出来るだけ音質に配慮したケーブルを使用したいと考えるのが
自然ではないかと思います。

DCケーブル自体は、他のケーブルとの接触で比較的大きな影響を受けます。
特にACラインは交流磁界を発生させますので、DC線や信号線からは出来る限り
遠ざけた方が無難です。

直流(DC)は一方通行ですので、ラインケーブルに与える問題は少ないのですが、
不味いのは交流(AC)です。一秒間に50回60回と周波が変わりますので
「ブーーー」と言うハムノイズが、ラインに悪影響を与えてしまいます。

交流磁界はプラスマイナスの2本の配線を撚る事でかなり減らすことが出来ます。
これをツイスト配線と呼びます。撚り合わせる毎に互いの磁界を打ち消し合います。

磁界の強さは電圧に比例します。高い電圧ほど磁界は強いので100VもあるAC線と
DCケーブルとラインケーブルは、出来るだけ接触をさせない事が重要になります。

しかしながら現実はそうは上手く行かず
ケーブルがゴチャゴチャし、意図せずに様々なケーブル同士が
互いに接触してしまう環境が殆ではないかと思います。


可能な限り磁界の影響や震動に強く、他のケーブルやノイズ環境に強い
音質面に十分配慮した、良質なケーブルを用いる事が
重要だと考えています。

DCケーブルにも、他のケーブルと同様に配慮すべきでは無いかと考えます。

次回はDCケーブルと実際の機材配置について
お話ししようかと思います。

2016年4月11日月曜日

電源筐体とDCケーブルとの関係(その1)

最近、ハイエンドオーディオ機器やポータブル機器で、
電源が別筐体になったモデルを良く見掛けます。

本体と電源とを別筐体とする事で、より強力な信号処理部と電源部とを
構築する事で、より高い音質向上を図る事を目的としています。

またポータブル機器の場合、本体に電源部を収めるスペースが少なく
別筐体にせざるを得ない場合があります。

勿論この場合、本体と電源部とをケーブルで接続しなければなりません。
AC(交流)電源をDC(直流)に変換し、本体へ送りますので通称DCケーブルと
一般的に呼ばれています。

ハイエンド機器に用いられるDCケーブルは、
ピン数の多いコネクタを採用される事が多く見受けられます。

これはAC電源から生成されたDCが、機材が必要とする複数の電圧に変換され
その各種電圧を、それぞれのマイナス線と併せてペアで伝送する為に
本数がどうしても多くなってしまう訳です。

例えば4種類の電源電圧を伝送しようとすると
4種類x(±2)で最低でも8pinのケーブルが必要となります。

ピン数が増えると、オーディオ用の汎用のコネクタでは数が足りず、
工業用や専用の特殊コネクタを採用せざるを得なくなってきます。

また使用されるケーブルも、多芯バンドル線と呼ばれる
工業的な細い線材を用いる事が多くなります。

こうなると、より良質のDCケーブル交換を試みたいと思い立っても
ますます困難になってしまいます。

そこで弊社では、コネクタの種類とケーブルの本数、ピンアサインを調査し
製作しております。
※標準とは異なる結線がなされている場合もあり、
そのままでは機材を破損してしまう恐れがあるので特に注意が必要です。


次回はこのDCケーブルの実際の使い方について、お話ししようと思います。

2016年4月8日金曜日

震動とケーブルとの因果な関係(その2)

前回は震動とケーブルの関係についてでしたが
今回は続きとして、コイル化の話をしようと思います。

ケーブルが実際に使用する長さよりも長くなった場合、その取り回しに苦慮する
事が多々あるのでは無いかと思います。
その際に、ケーブルを輪状にして束ねない方が良い。等の話を
聞いた事がありませんでしょうか。

これはケーブルのコイル化を防ぐ為の物に他なりません。
コイルという部品は、絶縁された銅をリング状にして幾層にも重ねた物になります。
ケーブルもとぐろを巻いてしまうと、同じような働きを持つ事になってしまいます。

またコイルは、電流を流すと自ら震動を起こします。
ノイズカットトランスやパワーアンプのトランスが、唸ったり震動したりし
頭を悩ませている方もいらっしゃると思います。

この点からもケーブルを輪にしてループを作るのは避けた方が無難です。

特に磁性金属とケーブルのループが組み合わさると
コイル成分(インダクタンス)が強く出てきますので
特に注意が必要です。

例えば鉄筋建物の床や壁面に、ループ状に束ねたケーブルを置いてしまったりと
予想外の影響を受けてしまう事が起こりえます。

割と日常的にやってしまいがちなケースが考えられます。


余談ですが、光ケーブルに関しては長さが余ったら
逆にループを形成した方が、音質面で有利になる事があります。
これはケーブル内での反射が末端で時間差を生じる光ケーブルならではの現象で
ループを形成する事で、反射の時間差が減り、結果的に
伝送エラーが減少する事が知られています。

ただこんなにケーブルが輪になっていると、正直邪魔ですよね…。


この様にケーブルの性質を少し理解しておくと、
適した使い方をする事で、音質向上を図れる事もあります。

一度、ラック背面の配線状況を見直してみるのも
よろしいのでは無いでしょうか。

2016年4月4日月曜日

震動とケーブルとの因果な関係(その1)

今回はややマニアックな話になりますが
震動とケーブル、そして音質に与える影響について
お話ししようと思います。

ケーブルの防振対策は、産業用電線の分野から
一般的な家庭用屋内配線に至るまで、ごく普通に行われています。

特に過酷な環境下では、信頼性と安全性の面から
ケーブルを厳重に保護する方法が採られています。

以前、ケーブルはコンデンサやコイル、抵抗と言った要素も持つ。
と言うお話をしましたが、外部からの加わる震動は
微弱ながらも、発電作用が起こります。

例えば他にオーディオでこの発電作用が大きな問題になるケースとしては、
スピーカーからの逆起電力があります。

スピーカーを駆動するのは電磁石によるモーターの作用ですが
それにより動いた振動板は、ダンパーによって元へ戻る力が働きます。
(車のサスペンションと似ていますが、ショックを吸収する機構がありません)
この動きが、モーターの逆、つまりスピーカー自身が発電機となり
そこで発電された電力は、そのままアンプへと戻ってしまいます。
そして駆動しようとする力と互いに影響し合い、音質を損ねてしまいます。

ケーブルに加わる震動程度では、この様な強力な発電作用はありませんが
扱う電圧や電流が微弱な箇所程、震動は音に大きな影響を与えます。

勿論、単に防振対策を徹底して行えばいいかと言うと
そこまで話は単純ではありません。

使用する箇所や環境によっても、震動が音に与える影響は様々です。
対策も度を超してしまうと、音に躍動感を感じられなくなる事もありました。

弊社では震動を効果的に吸収し、熱に変換するハイテク素材を
適材適所に用いる事で、音質とのバランスを考慮した
より効果的な対策を行っています。

次回は震動がケーブルに与える影響についての続きとして、
ケーブルが持つインダクタンス(コイルの作用)について

お話ししようかと思います。

2016年4月2日土曜日

アースとその接続方法ついて(その3)

前回までは、機器のライン接続にまつわるアース接続についてでした。
今回は電源ラインのアースと、アース対策機器についてお話しします。

AC接続でアースと聞いてまず思いつくのは、3Pプラグではないかと思います。


日本では2005年度から新築建築物に限り、アース端子付きコンセントが推奨されています。
※初期案では義務付けでしたが、後に推奨へ格下げされました。
既存の建物へは現在に至るまで、特に規制・罰則はありません。

採用している電圧が100Vであり、感電しても危険性が少ない
電圧変動が少ない、と言う判断からだそうです。
これは戦後からの電気配線の普及経緯から、やむを得ない面があると思います。

最近では家庭用IH調理器具や空調家電に200Vを採用するケースが増えています。
この200V用コンセントは、アース接地極付にする事が義務づけられています。


さて、オーディオ用途に使うアースについてですが
この家電用アースと共用してしまうと、様々な問題が起こる可能性があります。

結論から言うと、繋ぐ事で却ってノイズが増えたりするケースが
往々に起こりえる。と言う事です。

電気は高いところから低いところへ流れやすい、と言う話は前回でお話ししましたが
これはこのアース共有の関係にも当てはまります。

家電製品(特に空調やIH、洗濯機等)の消費電力はオーディオ機器と比べても
格段に高いので、オーディオ機器側のアースが、その影響を受けやすいのです。

オーディオ用アース工事をする際、家電とは別に独立して施工する事例が多いのは
これらの理由があるためです。

最近では仮想アース機器なる製品が登場しています。
こう言った物を、信号線のアースや機器のアース端子に
接続し、電源とのアースと独立させる事で、悪影響を減らす手法もあります。


ではアース結線がされていない電源3Pプラグには意味が無いかと言うと
そんな事は無いと思います。

電極ブレードよりも長いアース棒がコンセントに深く刺さります
(ブレード2本にアース棒が加わる)ので震動に有利に働きます。
プラグ自体の抜け防止の面からも、3Pの方が2Pよりもしっかり刺さります。

欠点があるとすれば、既存の2つ口コンセントに3Pプラグを挿入するには
3P>2P変換アダプタを用いなければならない事だと思います。

※余談ですが、日本のオーディオフェアの各会場は2Pプラグ壁コンセントが殆どで
デモ中に抜ける恐れがある為、皆さん苦労されているようです…。