前回までは、機器のライン接続にまつわるアース接続についてでした。
今回は電源ラインのアースと、アース対策機器についてお話しします。
AC接続でアースと聞いてまず思いつくのは、3Pプラグではないかと思います。
日本では2005年度から新築建築物に限り、アース端子付きコンセントが推奨されています。
※初期案では義務付けでしたが、後に推奨へ格下げされました。
既存の建物へは現在に至るまで、特に規制・罰則はありません。
採用している電圧が100Vであり、感電しても危険性が少ない
電圧変動が少ない、と言う判断からだそうです。
これは戦後からの電気配線の普及経緯から、やむを得ない面があると思います。
最近では家庭用IH調理器具や空調家電に200Vを採用するケースが増えています。
この200V用コンセントは、アース接地極付にする事が義務づけられています。
さて、オーディオ用途に使うアースについてですが
この家電用アースと共用してしまうと、様々な問題が起こる可能性があります。
結論から言うと、繋ぐ事で却ってノイズが増えたりするケースが
往々に起こりえる。と言う事です。
電気は高いところから低いところへ流れやすい、と言う話は前回でお話ししましたが
これはこのアース共有の関係にも当てはまります。
家電製品(特に空調やIH、洗濯機等)の消費電力はオーディオ機器と比べても
格段に高いので、オーディオ機器側のアースが、その影響を受けやすいのです。
オーディオ用アース工事をする際、家電とは別に独立して施工する事例が多いのは
これらの理由があるためです。
最近では仮想アース機器なる製品が登場しています。
こう言った物を、信号線のアースや機器のアース端子に
接続し、電源とのアースと独立させる事で、悪影響を減らす手法もあります。
ではアース結線がされていない電源3Pプラグには意味が無いかと言うと
そんな事は無いと思います。
電極ブレードよりも長いアース棒がコンセントに深く刺さります
(ブレード2本にアース棒が加わる)ので震動に有利に働きます。
プラグ自体の抜け防止の面からも、3Pの方が2Pよりもしっかり刺さります。
欠点があるとすれば、既存の2つ口コンセントに3Pプラグを挿入するには
3P>2P変換アダプタを用いなければならない事だと思います。
※余談ですが、日本のオーディオフェアの各会場は2Pプラグ壁コンセントが殆どで
デモ中に抜ける恐れがある為、皆さん苦労されているようです…。