2016年3月30日水曜日

アースとその接続方法ついて(その2)

前回はレコードのアース接続についてお話ししました。
今回はライン接続機器のアース接続についてお話します。

ライン接続でアースを意識するケースとしては
XLR端子でのバランス接続だと思います。

最近はプレーヤーやアンプだけではなく
トーンアームからのPhono出力やヘッドフォンへの出力端子にも
XLR端子を見掛けます。

バランス接続にはアース(GND)信号を送るラインがあり、正相と逆相で送られてくる
音声信号の基準となっています。

このGNDラインは本来、何も流れず電圧も0Vであるのが理想です。
しかし実際には(本来は不要な)電流が流れていたり、ノイズが飛び込んで来たりします。
基準が揺れたりする訳ですから、当然のことながら音声信号もその都度
悪影響を受けてしまいます。

そこでアンプやプレーヤー等の機器から、アースを接続する事で
音質を向上させる事が出来るケースがあります。

とは言え、全ての機材をアース接続すれば良いか、と言うと
そこまで話は単純ではありません。

オーディオ機器の電源をアース端子付き3Pケーブルで
同じコンセントや電源タップから供給すると、知らず知らずの内に
その機器は、アースを共有してしまっている場合もありえます。

全てを一気に理解しようとしても、とてもややこしいので
まずは以下のポイントを抑えておくのがいいのではと思います。


1. アースには電位(電源ON時に流れる)が存在する。
(アースだからと言って全く電流が流れていない訳ではない)

2 電位の高い機器から低い機器へ、電流は流れる。
(水が高いところから低いところへと、自然に流れるのに似ています)

3 アースは予想外の所で回路が繋がっている場合があるので
複数機器を一気に繋げたりせず、一台ずつ接続しその都度、音とノイズを確認する。


アースの取り方は、アース端子が装備されている機器であればそこから取り
無い機器の場合は、シャシーのネジを緩め、そこから取る方法が一般的です。

アース線を着脱する際は、予めアンプの電源を落とすか、ボリュームを最小にするか
MUTEしておいて下さい。
※場合によっては接続の際にバチッ!と大きなノイズが出る事があり
機器にダメージを与える恐れがあります。

最近はNASを始めとしたオーディオ用ネットワーク機器も登場して来ました。
こう言ったデジタル機器とGNDをアンプ等アナログ機器と共有する場合は
音に大きく影響が出るケースが多いので、特に注意が必要です。



アースは一見単純そうですが、現実にはなかなか難しいところがあります。
こうすれば良い。と言うセオリーが存在しないので、音を聴きながら
接続をするかしないかを判断するしか無いと言うのが実情の様です。


次回は電源ラインのアースと仮想アース機器を取り上げようかと思います。

2016年3月28日月曜日

アースとその接続方法ついて(その1)

今回はお客様からご質問がありましたアース接続について、
何回かに分けて、お話して行こうと思います。

アース接続端子を最も意識するケースとしては、
トーンアームからの接続でしょう。

アンプやフォノイコライザー等のPhono入力には、
アース線用のターミナルが装備されています。
これが未接続のままですと何も再生していなくても
「ブーーーーン」と言うハムノイズが出てしまいます。

カートリッジからトーンアームを通るケーブルはノンシールド線であり
アーム内部を移動中にノイズを拾ってしまいます。

トーンアームは9inch~11inch(およそ23~28cm)程の長さがあります。
その程度の長さでノイズが載ってくるとは、アナログ機器の使用経験が無い方には、
なかなか想像が付きにくいかと思います。

しかしカートリッジからの信号は極めて微弱な電圧のため、ノイズに対して脆弱です。
駆動モーターや電源回路、ラジオの電波にすら大きな影響をうけます。

その後、フォノイコライザー等で電圧を1000倍近くに増幅します。
すると、極わずかなノイズであっても非常に大きな影響が現れてしまいます。
これがハムノイズ発生の主なメカニズムです。

それを少しでも防ぐため、
トーンアーム部と機器間をアース線で繋ぎ、電位差を無くす事で
トーンアームの金属パイプにシールド効果を持たせます。
これに因ってハムノイズを大幅に低減する事が出来ます。
(これは、ケーブルのシールドと全く同じ原理です。)

金属パイプをシールド化することで、ケーブルを重くする事無くシールド効果を得られる
一石二鳥の理に適った設計と言える訳です。


このレコード用アースの他に、機材の感電防止用ACアースラインや
アンプにも、シグナル用アースターミナルを設けている機器があります。

繋ぐ事でノイズが低減する場合もありますが
逆に増えてしまうケースもあります。
更には時間帯によっても、ノイズが増えたり減ったりします。

これではアース接続をどう接続するかで迷ってしまいます。

次回はどうすればこの問題が解決するのか、と言う事で
私自身の実践と経験も踏まえ、引き続きお話していきたいと思います。

2016年3月25日金曜日

ハンダと音との蜜月な関係

前回は端子に施されるメッキについて、お話ししましたが今回は
ケーブルと端子を繋ぐハンダについてお話しします。


オーディオ用と銘打って販売されているハンダを始め
プリント基板用や家電製品用など、様々な種類が販売されています。

現在販売されている半田は、欧州での鉛規制に従い、錫を主成分にしています。
以前は錫の他に鉛が多く含まれ、これが問題になったわけです。

例えばヴィンテージワイヤーを用いたケーブルを端子に半田付けする際は
こう言った錫と鉛を、製造されていた当時の半田を見掛けます。
確かに、当時の使用されていた環境に近づきますので
音も当時の音に近い物を再現するには、適しているのでは思います。

現在ではオーディオ用として有名になった半田が、銀入り半田です。
3~4%程度の銀を錫に加えるのですが、これにより
融点がやや高くなるので、半田作業に慣れた方で無いとやりづらく
パワーのある半田小手でないと融けづらくなっています。

では、そもそも何故銀を添加した物が出回ったかというと
細い銀線や銀コート線に半田付けをする際、馴染みを良くする為です。

各社から銀の比率を変えたり、様々銀入り半田を色々と試してみると
同じ銀入りでも各社で様々な個性があり、面白い物だと感心した記憶があります。

他には銅を1%程度混ぜた半田もあり、こちらはパンチの効いた
力強い音だったと記憶しています。

さらには金やプラチナ、他にもゲルマニウムや様々な金属を
配合したオリジナルブレンド半田もあり
使う方の好みに合わせた物を、選べるようになっています。

ですが、そんな半田も肝心の端子にしっかりと接続されていなければ
効果半減どころか、台無しになってしまいます。

末端加工に半田処理をせず、ネジ留めだけで留めてしまう
ケースを多々見掛けますが、以前のコラムでも述べましたが
銅の酸化を促進させ、ひどい場合には導通すら妨げてしまう場合もあります。
酸化を出来るだけ防ぐ為にも、導体に半田でコーティングをすると
酸化の影響を大幅に低減する事が出来ます。

○銅に半田(いわゆる錫)を混ぜる事で、音が悪くなる。
●半田で固めると、接触する箇所が減って音が悪くなる。

と言う理由で
敬遠される方もいらっしゃいます。

しかしながら、徐々に酸化が進み黒く変色した銅線は導通に悪影響が出ます。
最悪の場合には断線や不具合にも繋がります。
こうなると、音質云々以前の問題になってきます。

これを防ぐには導体の定期的に導体を剥き直す事になるのですが、
なかなか面倒で、現実的には難しいと思います。

であるならば、しっかりと半田を利用し末端処理を確実に行った方が、
結果的には音にも、性能の長期維持にも、適しているのでは無いかと考えます。

また接触に関しても、スペード端子やバナナプラグを用いても同様の問題があります。
半田処理した導体をターミナルへ直接接続しても、しっかり端子で締めてあげる事で、
確実な接続と接点を充分に得る事が出来ると思います。


弊社ではケーブルの末端処理は、長年に渡り安心してお使い戴けるよう
作業を行うよう、心掛けております。

2016年3月23日水曜日

ケーブルのメッキとその性質ついて

今回は、端末に用いられるメッキ加工について
お話ししようと思います。


まずは一般に最も普及している金メッキについてです。

端子素材の多くは銅合金(銅と亜鉛の合金)で、銅の比率が高い物です。
銅の比率をより高くし導電率を高め、高品位を謳う端子が増えて来ています。

しかしながら銅が主成分ですので、銅の成分が多ければ多い程
酸化が進みやすく、特に端子表面に酸化膜を成形し、
肝心の導通を阻害してしまいます。

そこで酸化等の経年変化に強い、金を表面にコーティングさせる訳です。

金は銅や銀に迫る導電率の高さを誇ります。
しかしながら、硬度があまり無いので端子等の着脱を頻繁に行うと
どうしても他の端子との摩擦で塗膜が薄くなってきます。

また、長年湿度の高いところへ放置しておくと、やはり酸化膜が
金メッキの上にも形成されてしまいます。
それを除去する為に、端子を研磨剤で磨くと
金メッキ自体を著しく痛めてしまいます。

そこで登場したのが、白金系の希少金属であるロジウムメッキです。

ロジウムの導電率は、金よりやや劣りますが
金よりも強い硬度を持っています。
この為に着脱の多い箇所に用いるには、適した素材と言えます。

最近では金メッキの上位仕上げとして、定着して来た印象があります。
欠点はコストで、金メッキ以上に掛かってしまいます。

他にも、白金系の仲間であるパラジウムメッキや
プラチナメッキを採用している端子も見掛けます。

私の個人的なメッキ差による音質の印象はおおよそ、以下の通りです。


1.金メッキ
・柔らかくマイルド。優しい音調でピラミッドバランス。
破綻が少ないので、リファレンスプラグに採用例が多いのも納得。

2.ロジウムメッキ
・音に張りと艶がのり、情報量が多く再現性に優れている印象。
輪郭がはっきりするので高解像度系に向いている印象。

3.パラジウムメッキ
・厚手の音で、重厚な印象。濃い音像が出てくるので躍動感を重視する人に
向いている印象。

4.プラチナメッキ
・華やか。色艶が出て全体的に音が楽しくなる印象。
全体的な印象は金メッキに近く、しっかりしたバランスを持つ。

5.銀メッキ
・最初の内は高い鮮度感を持ち、クッキリとさせる印象。
時間経過と共に落ち着いてくるが、その速度が他のメッキ加工よりも
ずっと早い印象がある。


弊社では、お客様の希望に合わせた端子変更も承っております。
納品後の端子交換や変更にも対応致しますので、お気軽にご相談下さい。

2016年3月18日金曜日

ケーブルの特性インピーダンスについて

前回は同軸ケーブルとその種類についてお話しました。
今回は知っているようで意外と知られていない、
ケーブルのインピーダンスについて
お話ししようと思います。

インピーダンスは、抵抗値で表されます。
単位はΩ(オーム)ですから、混同して考えやすいのですが
ケーブルで表されるインピーダンスと
抵抗のインピーダンスは意味合いが少し異なります。

では抵抗そのもの(純抵抗)とケーブルのインピーダンスとでは
何が違うのか、と言うと

○純抵抗のインピーダンスは周波数に関係なく一定である
※例えば、1kHz100kHzでの抵抗値は同じである。

○ケーブルのインピーダンスは周波数で変動し
高周波(おおよそ100kHz以上)で安定する。

※下図の様に特定の高い周波数から、特性インピーダンスは一定になる
 

この点が大きく異なります。

つまりケーブルのインピーダンス(区別して特定インピーダンス)
流れる周波数帯域によってその特性が変化する、と言うことです。

オーディオで使用されるアナログ信号を伝送する帯域では
せいぜい0100kHzと言うところです。
特性インピーダンスが75Ωの物を使用しても50Ωの物を使用しても
実際はそれよりかなり高いインピーダンスとなるので
伝送上の問題になる事がほぼありません。

ところが、高い周波数を伝送するのでは話が変わってきます。

CDプレーヤーからのデジタル出力を例に挙げると
サンプリング周波数は44.1kHzですが
実際にその同期に必要とされ、伝送される周波数は
その128 (1つのサンプルに必要な 64bitとステレオ2ch)
5.6448MHzとなります。
これが何倍かにアップサンプリングされたり、ハイレゾで扱う周波数となると
更に高い周波数となり、192kHz伝送時には
24.576MHzとなり、今後更に周波数が高くなるケースも有り得ます。

これだけの周波数になると、ケーブルの特性インピーダンスや
接続部分でインピーダンスの整合(マッチング)
正しく取れていないと、信号の反射や接続部分での輻射
(反射が送った信号と折り重なり、更に強い反射となる)ノイズが出て
伝送に支障が出る恐れが高くなります。

ここまで来てしまうと、音の善し悪し以前の問題になってしまいますので

●高い周波数信号伝送には、規格に沿ったケーブルを使う

事が重要である理由が分かります。

ちょっと難解かも知れませんが、ハイレゾ時代になった現在
デジタルで運ばれる信号にはこう言う問題もある。

と言う認識を持って戴ければ幸いです。

2016年3月17日木曜日

同軸ケーブルについて(その2)

前回は同軸ケーブルの簡単な構造についてお話しました。
今回は身の周りに存在している同軸ケーブルの種類についてお話しします。

まず、最も身近で使われる同軸ケーブルに、TV用のアンテナ線が
それに相当するとお話ししましたが、その区別する方法として
専ら、インピーダンスと言う値で示されています。

TVアンテナ線は「インピーダンス75Ω」と言う規格で表されます。
これは規格で定められており
「75Ωで設計された同軸ケーブルを用いること」
として周知されています。

他にも75Ωの同軸ケーブルを使用することを
定められたケーブルで比較的身近な物は

○アナログ映像用 コンポジットケーブル
(RCAプラグに黄色の目印が付けられた映像用ケーブル)
○S/PDIF用 COAXIALケーブル
(CDプレーヤーから出力されるデジタル用ケーブル)
○Word Clock用 BNCケーブル
(D/Aコンバーター等他の機器と同期する為のBNC端子搭載ケーブル)

が挙げられます。

それとは別に、同じ同軸ケーブルでも
もう一種類、違うインピーダンス規格を持つケーブルが存在しています。
それは50Ω同軸ケーブルです。

この50Ω線が主に使われるのは

○アマチュア無線用 アンテナケーブル
(アンテナ端子形状に応じて、様々な50Ω専用端子を取付)
○GPSアンテナ用ケーブル
○10MHz用 BNCケーブル
(原子時計やGPSからオーディオ機器へ同期接続する為のケーブル)

少し厄介なのは、この75Ωと50Ω同軸ケーブルは
ぱっと見、殆ど区別が付きません。

簡単な見分け方として、ケーブルの外装に
50Ω用5D-FB
75Ω用 5C-2V
 

この様に記載されています。
見分け方を簡単に言うと「5D-FB」とある型番表記の
2つ目のアルファベットが
「C」なら75Ω、「D」なら50Ωです。

XLRの極性と同じように
その誕生の経緯から、主に2種類の同軸ケーブルが市場に混在しています。
アナログケーブルとは違い、用途は規格で定められていますので
これに適合したケーブルを用いた方が、
伝送特性を設計上想定された範囲内で、使用することが出来ます。

これらのケーブルは高周波(主にMHz以上の帯域)で用いられます。
何故高周波か?低い周波数ではどうなの?
と言う疑問については、また改めてお話したいと思います。

2016年3月15日火曜日

同軸ケーブルについて(その1)

前回までは、主に絶縁体の種類と性質についてお話ししてきました。
それを踏まえた上で、今回は生活空間にも多く使われている
同軸ケーブルについてお話しします。

その誕生は古く、前世紀にまでさかのぼります。
基本的な構造は、中央に信号導体を配置し、その周囲に
絶縁体と外部導体を配置して、その周囲を被覆で覆う構造をしています。
参考画像:IPA(情報処理推進機構) http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

ご覧の通り、円形に綺麗に配置されていますので
ケーブルの理想と言われている、何処で切断しても同じ断面をしている
いわゆる「金太郎飴」に近い構造をしています。

1960年代にポリエチレン絶縁体が発明されるまでは
中心導体は中空な構造をしており、外部導体には銅管パイプを
用いていました。

近年はポリエチレン絶縁体に気泡を含ませ、静電容量をより低減した
発泡ポリエチレンや、更に気泡を細かくした高発泡ポリエチレンを
用い、より高周波向けに造られた物があります。

この同軸ケーブルは、高い生産性とその特性を活かし
私たちの生活に溶け込んだ物となっています。

最も身近な用途では、TVアンテナ線に用いられています。
ケーブルTVBS/CSデジタルの普及に伴い、高性能な同軸ケーブルを
用いるケースが増えてきました。

またオーディオ用途でもCDプレーヤーやトランスポートからの
COAXIAL(=同軸の意)ケーブルやクロックケーブル(Word Clock)
同軸ケーブルは使用されています。

以前にはLANケーブル登場前、10Mbase伝送用途に
BNC端子を付けた同軸ケーブルを用いていました。

こうした、様々な用途に用いられている反面
実はその用途に応じた使い方が求められるのですが
ここ最近、混同されて使用されるケースを幾つか目にします。

次回は、この用途と種類、そして同軸ケーブルのインピーダンスについて

お話ししたいと思います。

2016年3月11日金曜日

ケーブルと構造について5(絶縁体と導体の関係4)

前回はPTFE/PFAと言った絶縁体についてお話ししました。

最後に、その他の絶縁体についてお話しします。

まずポリプロピレン(PP)樹脂についてです。
これはポリエチレン(PE)樹脂と性質が似ており、
音質傾向も似た印象を持ちます。
特にオーディオ用途のフィルムコンデンサで
熱成形と音質との関連性から、高品位絶縁材料として用いられています。

オレフィンやポリオレフィンと言った絶縁材もあります。
これらにも、特殊処理を施した架橋ポリオレフィンや
電子線照射ポリオレフィンなどの強化素材も存在します。
主に電源ケーブルなどの電流が多く流れる箇所で採用されています。

これらもポリエチレンと(ケーブルの絶縁体としては)
似たような性質を持っています。触った感触としては
しなやかなゴム系の材質に近い印象を持ちます。


他にはクラシカルなビンテージワイヤーに用いられる絶縁材として
綿糸や絹糸、または紙が用いられる事があります。

綿糸や絹糸は静電容量が低く、1940年代以前では
一般的なケーブルの絶縁材として用いられていました。

その後、PEやPTFEが発見され、徐々に樹脂材料へと切り替わっていきましたが
当時の音を再現しようとするのであれば、ビンテージワイヤーに
用いられてきた絶縁材料である綿糸や絹糸は、理に適っていると言えます。

利点としては

・水分を浸透させやすいので、絶縁油を併用させる用途箇所(熱の出る高圧トランス等)
での用途に向いている
・静電容量が比較的低く、可聴帯域に与える影響が比較的少ない

欠点としては

・水分を吸収し易い(湿度や結露などに影響を受ける)
・それに伴い、高温多湿な環境で短絡(ショート)を引き起こしやすい
・経年変化しやすい

と言った点が挙げられます。

ビンテージ方向に音質を狙って出したい場合には
敢えて錦糸や絹糸をも用いて音に特徴を出す方法もあります。

ここまで、様々な絶縁材料を説明してきましたが
それぞれに、特徴があり音質に与える影響も異なっています。

今後、ケーブルと触れ合う機会がある際に
絶縁材料の事も、頭の片隅にでも留めておいて戴くのも
面白いと思います。

2016年3月7日月曜日

ケーブルの構造について4(絶縁体と導体の関係3)

前回まではPVCやPEと言った一般的に多く用いられる絶縁体についてお話ししました。

今回は、皆さんお馴染み(?)のPTFE,PFAと言った
フッ素樹脂絶縁体についてお話しします。

PTFEは正式名称は[ポリテトラフルオロエチレン]と言い
PFAは[パーフルオロアルコキシアルカン]で
舌を噛みそうになります。
いわゆるフッ素樹脂と炭素の合成樹脂になります。

テフロンと言う名称は、米デュポン社の登録商標名で
名前はフライパン等の調理器具に用いられる表面加工素材等で
ご存じの方も多いと思います。

絶縁体というのは理想が空気と言われています。
空気は静電容量が少なく、製品の中には導体と絶縁材との間に空気層を設け
静電容量を著しく減らした製品も登場しています。

しかしながら空気は導体表面の酸化を促進させてしまいます。
特に音楽信号は導体の内部よりも無く表面を多く通る事が分かっており
酸化が音質に与える悪影響も大きく、実際に酸化した導線を聴いてみても
音質に与える悪影響が極めて大きい印象がありました。

PTFEはその性質上、空気絶縁に近い素材と言われており
耐熱性も高く、素材への浸食もなく、絶縁材として高い性能を有しています。

最近では新たにPFAと言う同じフッ素樹脂も登場しており
こちらを絶縁材として採用されているメーカーも増えてきています。
性質はPTFEの仲間で、化学的特性も近く
ほぼ同じ物と捉えても差し支えないと思います。

利点としては

・耐熱性が高く、半田熱に強く熱熔解を起こしにくい
・静電容量も低く、可聴帯域に与える影響が比較的少ない
・絶縁性能が高い為、従来素材よりも薄くする事が可能

欠点としては
・350℃を超える高熱を加えると、変化・分解を起こし変質してしまう
・従来素材以上に外周に静電気を発生しやすい
・絶縁材料としては比較的高価

と言った点が挙げられます。

手触りや感触は、とても滑りが良く表面がツルツルしています。
ケーブル自体のツイスト化もし易く、素材として極めて安定している上に
熱にも強いので、加工も容易です。

PTFEやPFAを絶縁材用いたケーブルは、現代調の音質傾向を示す物が多い
印象があります。

性能が高い=高音質 とは必ずしも言えないところがオーディオの面白いところでもあります。

2016年3月4日金曜日

ケーブルの構造について3(絶縁体と導体の関係2)

前回はPVC(通称:塩ビ)絶縁体についてお話ししました。

今回はPE=ポリエチレン製絶縁体についてお話しします。
ポリエチレンには幾つか種類があります。

・ポリエチレン(PE)
・架橋ポリエチレン
・発砲ポリエチレン

主にこう言った物が、ケーブルの絶縁材に用いられます。

これらの違いについてですが
まず架橋PEはPEの改良型で、特殊な処理を施すことで
内部の結合構造をはしご状にして強化、主に耐熱性を大幅に向上させています。
※高圧電線や大電流を流す電材に多く用いられます

発砲PEは文字通り、気泡を含ませることで特性を空気に近づけて
絶縁性能と低静電容量とを向上させています。
更に気泡を細かく充填した高発砲タイプもあります。
※高周波同軸線等、より高い性能を求められる製品に用いられます

利点としては

・可塑剤を使用していないので、ケーブル性能の長期安定に寄与する
・静電容量が低く、音に与える影響が少ない
・熱に比較的強い

欠点としては
・被覆が堅めで加工難易度がやや高い
・やや高価
・静電気を帯びやすい

と言った点が挙げられます。

弊社ではPE素材においても、外皮素材の特性や音色傾向を精査した上で
その使用用途に応じ検討を重ね、各種類を選択し適していると
判断した物を採用しております。

また、この絶縁素材の欠点を補う為、他の特殊な素材を手作業にて
組み合わせることで音質のバランスを取っています。

お手持ちのケーブルメーカー様で、この様な使用素材のデータを
もし公開されているのであれば、是非一度チェックしてみるのも
面白いかと思います。

次回は皆さんおなじみ、フッ素樹脂についてお話しします。

2016年3月2日水曜日

ケーブルの構造について2(絶縁体と導体の関係1)

ケーブルにおいて、信号を伝送するのが導体ですが
それを他の導体とのショートや外界からの衝撃等から
保護する役目を担うのが絶縁体です。

通常の使用でケーブルに傷が付いたり、導体の酸化を防止する為
長年に渡る性能維持の為には欠かせない物です。
しかしながら、導体にばかり着目され、それを保護する絶縁体に注目が集まる事は
メーカーからの解説以外では殆ど有りません。
絶縁材の解説を個別に読んでも、実際に導体へ
どの様な影響を与えているかを解説している物は
殆どありませんでした。
そこで数回に分け、記事をまとめていこうと思います。

ケーブルに用いられている絶縁材の種類は主に

※PVC:ポリ塩化ビニール
※PE:ポリエチレン(架橋・発砲タイプも有)
※PP:ポリプロピレン
※ポリオレフィン(様々な派生有)
※綿糸・絹糸
※PTFE:テフロン(フッ素樹脂)
※PFA:フッ素樹脂の一種

この様な種類を良く見掛けます。
今回は数多く見掛けるPVCについてお話します。

まずPVC(Poly Vinyl Chloride:ポリ塩化ビニル)の
利点は
・安価(入手性高)
・柔軟性があり、被覆を剥きやすく加工が容易
・水分の浸食に強い(導体の酸化・硫化防止に役立つ)

欠点としては
・誘電率が高め(静電容量が増加しやすい)
・柔軟性を得る為に添加された大量の可塑剤が導体へ移行し、変質を引き起こす。
・静電容量増加による音質に与える影響が、特に可聴帯域で大きい。
と言う点が挙げられます。

この中で最も大きな問題なのが、可塑剤の移行です。
特に透明ケーブルの導体(銅)に、剥いてもいない箇所から
緑青が噴いているのを見たことはありませんでしょうか。
あれは可塑剤に含まれていた塩素が、銅イオンと反応して起こっています。


導体を保護するはずの絶縁材が、その肝心な導体を浸食してしまっては
本末転倒になってしまいます。

特に音の信号は導体の表面を流れやすい性質を持っていますので
その表面の抵抗値がこの変質によって変化すれば、
音質に悪影響を与えることは容易に想像が出来ます。

弊社では導体のみならず、この絶縁材の材質についても
十分留意する様、心掛けています。

次回は別の絶縁材についてもお話しします。