2016年3月2日水曜日

ケーブルの構造について2(絶縁体と導体の関係1)

ケーブルにおいて、信号を伝送するのが導体ですが
それを他の導体とのショートや外界からの衝撃等から
保護する役目を担うのが絶縁体です。

通常の使用でケーブルに傷が付いたり、導体の酸化を防止する為
長年に渡る性能維持の為には欠かせない物です。
しかしながら、導体にばかり着目され、それを保護する絶縁体に注目が集まる事は
メーカーからの解説以外では殆ど有りません。
絶縁材の解説を個別に読んでも、実際に導体へ
どの様な影響を与えているかを解説している物は
殆どありませんでした。
そこで数回に分け、記事をまとめていこうと思います。

ケーブルに用いられている絶縁材の種類は主に

※PVC:ポリ塩化ビニール
※PE:ポリエチレン(架橋・発砲タイプも有)
※PP:ポリプロピレン
※ポリオレフィン(様々な派生有)
※綿糸・絹糸
※PTFE:テフロン(フッ素樹脂)
※PFA:フッ素樹脂の一種

この様な種類を良く見掛けます。
今回は数多く見掛けるPVCについてお話します。

まずPVC(Poly Vinyl Chloride:ポリ塩化ビニル)の
利点は
・安価(入手性高)
・柔軟性があり、被覆を剥きやすく加工が容易
・水分の浸食に強い(導体の酸化・硫化防止に役立つ)

欠点としては
・誘電率が高め(静電容量が増加しやすい)
・柔軟性を得る為に添加された大量の可塑剤が導体へ移行し、変質を引き起こす。
・静電容量増加による音質に与える影響が、特に可聴帯域で大きい。
と言う点が挙げられます。

この中で最も大きな問題なのが、可塑剤の移行です。
特に透明ケーブルの導体(銅)に、剥いてもいない箇所から
緑青が噴いているのを見たことはありませんでしょうか。
あれは可塑剤に含まれていた塩素が、銅イオンと反応して起こっています。


導体を保護するはずの絶縁材が、その肝心な導体を浸食してしまっては
本末転倒になってしまいます。

特に音の信号は導体の表面を流れやすい性質を持っていますので
その表面の抵抗値がこの変質によって変化すれば、
音質に悪影響を与えることは容易に想像が出来ます。

弊社では導体のみならず、この絶縁材の材質についても
十分留意する様、心掛けています。

次回は別の絶縁材についてもお話しします。