最後に、その他の絶縁体についてお話しします。
まずポリプロピレン(PP)樹脂についてです。
これはポリエチレン(PE)樹脂と性質が似ており、
音質傾向も似た印象を持ちます。
特にオーディオ用途のフィルムコンデンサで
熱成形と音質との関連性から、高品位絶縁材料として用いられています。
オレフィンやポリオレフィンと言った絶縁材もあります。
これらにも、特殊処理を施した架橋ポリオレフィンや
電子線照射ポリオレフィンなどの強化素材も存在します。
主に電源ケーブルなどの電流が多く流れる箇所で採用されています。
これらもポリエチレンと(ケーブルの絶縁体としては)
似たような性質を持っています。触った感触としては
しなやかなゴム系の材質に近い印象を持ちます。
他にはクラシカルなビンテージワイヤーに用いられる絶縁材として
綿糸や絹糸、または紙が用いられる事があります。
綿糸や絹糸は静電容量が低く、1940年代以前では
一般的なケーブルの絶縁材として用いられていました。
その後、PEやPTFEが発見され、徐々に樹脂材料へと切り替わっていきましたが
当時の音を再現しようとするのであれば、ビンテージワイヤーに
用いられてきた絶縁材料である綿糸や絹糸は、理に適っていると言えます。
利点としては
・水分を浸透させやすいので、絶縁油を併用させる用途箇所(熱の出る高圧トランス等)
での用途に向いている
・静電容量が比較的低く、可聴帯域に与える影響が比較的少ない
欠点としては
・水分を吸収し易い(湿度や結露などに影響を受ける)
・それに伴い、高温多湿な環境で短絡(ショート)を引き起こしやすい
・経年変化しやすい
と言った点が挙げられます。
ビンテージ方向に音質を狙って出したい場合には
敢えて錦糸や絹糸をも用いて音に特徴を出す方法もあります。
ここまで、様々な絶縁材料を説明してきましたが
それぞれに、特徴があり音質に与える影響も異なっています。
今後、ケーブルと触れ合う機会がある際に
絶縁材料の事も、頭の片隅にでも留めておいて戴くのも
面白いと思います。